The Beatles『I Saw Her Standing There』


[Disc 1]
1. My Bonnie
2. Skinny Minnie
3. Whole Lotta Shakin' Goin' On
4. I Know Baby
5. You Are My Sunshine
6. Ready Teddy
7. The Saints
8. Hallelujah, I Love Her So
9. Let's Twist Again
10. Sweet Georgia Brown
11. Swanee River
12. Top Ten Twist
13. My Bonnie (German Intro)
14. Ich Lieb' Dich So
15. Der Kiss-Me Song
16. Madison Kid
17. Let's Dance
18. Ya Ya Part 1 & 2
19. Sweet Georgia Brown
20. Cry For A Shadow
21. Why
22. Dream Baby
23. Memphis,Tennessee
24. Please Mr. Postman
25. Ask Me Why
26. Besame Mucho
27. A Picture Of You
28. What'd I Say (With Gene Vincent)
[Disc 2]
1. Money (That's What I Want)
2. Till There Was You
3. To Know Her Is To Love Her
4. Take Good Care Of My Baby
5. Memphis,Tennessee
6. Sure To Fall (In Love With You)
7. Crying, Waiting, Hoping
8. Love Of The Loved
9. September In The Rain
10. Besame Mucho
11. Some Other Guy (Live)
12. Some Other Guy (Live)
13. Kansas City (Live)
14. Radio Interview
15. I Saw Her Standing There
16. One After 909
17. One After 909 (Alternate Version)
18. Catswalk
19. Catswalk (Alternate Version)
20. Love Me Do (Single Version)
21. P.S. I Love You
[グレー・ゾーンを含む初期音源集]

◎ 本題より先にお伝えすると、もしこれを読んでいる方が「既に全オリジナル・アルバムは聴き親しんでいる」段階で、『Anthology』以外の音源も聴きたくなった…時に聴く類のCDです。質問もされていないのにいちいちこんな事書かなくてもいいような…(笑)

 で、発売前から(一部で)何かと話題となっていた2枚組CDがリリースされました。EMI(or ユニヴァーサル)やAppleとは全く関係のないインディ・レーベルから発売されたもので、当初は2013年2月の発売予定が何か大人の事情でもあったのか、延期に次ぐ延期で、品番が一つ後のThe Beach Boys『Surfin' 1962』が先に出てしまったという…(笑)。恐らく4月下旬〜5月頃に市場に出たと思われます。収録されている音源は主にこういった種類のもの。

●トニー・シェリダン&ザ・ビート・ブラザーズ関連(1961〜1962年)
●デッカ・オーディション・テープ(1962年1月1日)
●リバプール、キャヴァーン・クラブでのライヴ音源(1962年)
●リバプール、キャヴァーン・クラブでのリハーサル音源(1962年)
●英BBCラジオ放送でのスタジオ・ライヴ音源(1962年)
●デビュー・シングル「Love Me Do」両面(1962年)

 この中では「トニー・シェリダン&ザ・ビート・ブラザーズ関連」「デッカ・オーディション・テープ」の2つが長年手を替え品を替え乱造された定番アイテムで、もう一つの定番だった1962年暮のドイツ・スタークラブのライヴ音源は一切未収録。

オンライン・ショップに記載のインフォによると「29曲が初のオフィシャルリリース」との事。ビートルズの(公式)未発表音源が含まれているとなれば、ニュース記事になったりCDショップのサイトで大々的に取りあげられても良さそうですけど、今回はそんな気配もなく。言い方は良くないですけど、50年経ってパブリック・ドメイン化したのを見計らって、どさくさに紛れて出しちゃった…って感じが強いですね。初登場音源をどこから持って来たかもある程度察しが付くわけで。かつて某黄色い犬レーベル等のCDや70〜90年代に某柏木公園周辺のお店に通い詰めていた人達にとってはおなじみの…(笑)。グレー・ゾーンなCDということで。
[詳細のようなそうでないような]

 発売後すぐにAmazonに詳しいカスタマー・レビューが投稿されていたのと、既に個人blogでも誰かしら取りあげていると思われます。うちはうちなので気にせず大まかに触れてみたいと思います。

Disc 1-1〜21

 1961年6月下旬、ビートルズにとって初の公式録音となったドイツ・ハンブルグでのセッションより。以前からビートルズ名義で発売されている事の多い音源ですが、実際の主役は、当時ビートルズと同じくドイツ巡業を行い現地で人気が出ていたTony Sheridan(vo,g)。ビートルズは彼の"バック・バンド"としてレコーディングに招かれたので、初めて聴く人にとってはビートルズを聴いている感覚は薄いかも。ちなみにドラムはピート・ベスト、ベースはスチュワート・サトクリフが脱退を表明したためポールにチェンジ。

 注意点はビートルズが演奏していない音源が含まれている事。これは60年代から現在までこの状態で、トニー・シェリダンが別のバック・バンドを付けて録音したもの混在しています。判別はビートルズではない演奏(The Beat Brothers)にはコーラスがなく、ピアノやオルガンが入っているのが主な特徴。それに対しビートルズが演奏している曲には低音のバック・コーラスが入っている、あとは…うしろでポールがはしゃいでいる声が聞こえる(笑)。なので上の曲目表では非ビートルズ音源はグレー表記にしてみました。ビートルズが演奏しているのは以下の曲。

1. My Bonnie
7. The Saints
13. My Bonnie (German Intro)
19. Sweet Georgia Brown
20. Cry For A Shadow
21. Why


 惜しくもジョンがリード・ヴォーカルの「Ain't She Sweet」が未収録なので、ヴァージョン違いを気にしない&この曲さえ入っていれば他のCDを買わなくて済む…とは行かず。その代わりに非ビートルズ音源がドサッと入っている…(苦笑)。一部アナログ盤から起こされている曲もあるようで、ノイズ除去が強めにかかっているのはその可能性が。それでもフツーに聴く分には問題はないです。

Disc 1-22~24
22. Dream Baby
23. Memphis,Tennessee
24. Please Mr. Postman


 表向きには初登場音源。1962年1月のレコード会社のオーディションの落選から暫くして、入って来た仕事がこの1962年3月7日、イギリスBBC放送の番組"Teenagers Turn"への出演。これがその時の音源で、ビートルズにとって初のラジオ出演となりました。番組は公開録音だったため、ビートルズのメンバーも後日放送を聴く事が出来たとのこと(この時のエピソードはDVD『ビートルズ誕生秘話 ピート・ベスト・ストーリー』の中でピート・ベストが証言しています)。

 ここに収録されているのは放送局が収録していたものではなく、恐らくファンの人がラジオのスピーカーにマイクを向け、それをテープに録音したものと思われます。音質が悪いのは元々AMラジオでの放送だったのと、録音方法によるもの。以前から非正規に出回っていたBBC関連のCD(主に某・デカい犬レーベルのボックス・セット等)に収録されていましたが、このCDでは左右にノイズが散乱しているのが難点。これって編集段階である程度は改善出来るはずなのですが…。ちなみに「Dream Baby」のエンディングではステレオ・リバーブをかけてフェイド・アウトさせています。

 3曲共に番組司会者のMCから演奏が始まり、ポールが歌う「Dream Baby (How Long Must I Dream)」は当時大ヒット中だったRoy Orbison(後にビートルズと共にツアーを回ったほか、80年代にはジョージとTraveling Wilburysを結成するアメリカのシンガー)の曲。直前のデッカ・オーディションでも演奏していた「Memphis,Tennessee」チャック・ベリーが1959年にシングルのB面として発表した曲で、ヴォーカルはジョン。翌年『With The Beatles』の収録曲となった「Please Mr. Postman」はモータウン・レコードのガール・グループ、The Marvelettesの1961年のヒット曲。フェイド・アウトするスタジオ版とは違い、独自のエンディングが付けられているのが中々新鮮。

 さらに付け加えると、当時ビートルズを世間に広めるために奔走していたマネージャーのブライアン・エプスタインは、このBBCラジオ出演の仕事を期に、メンバーに対し従来の革ジャンからスーツ着用に変更する事を指示。スーツ着用だけでなく、ステージ上での態度の悪さの改善をビートルズに促していたブライアンでしたが、雑誌『Beatleg』(vol.157/2013)でのピート・ベストの証言によると、ビートルズ側は突然着替えたワケではなく、時間をかけて徐々にスーツへと移行したとのこと。5人編成&ハンブルク巡業からブライアン・エプスタインが関わる前までのダーティーな雰囲気を醸し出していた頃がビートルズの本来の姿だったのかもしれませんが、バンドのステップ・アップと新たな時代へと向うには、こうした変化も必要だった…って事でしょうね今にして思うと。そういう、デビューに向う途中の微調整があった日の記録。

 このラジオ出演後の1962年4月11日、ビートルズは3度目のハンブルク巡業の為にドイツに向うわけですが、到着後、元メンバーで画家に転身したスチュアート・サトクリフが前日に脳出血で亡くなった事を知らされ、メンバーは大きなショックを抱えたままハンブルク巡業を5月いっぱいまで行なった後、再び転機が。

 ブライアン・エプスタインはこの間、プロデューサーのジョージ・マーティンと交渉し、EMI傘下(当時)のパーロフォン・レコードとの契約に成功し、6月6日、EMIでの初のレコーディング・セッションが行なわれる事になります(この時に録音された2曲は、1995年になって『Anthology 1』に収録されるまでお蔵入りに)。
しかしここでも問題が。レコーディングの際、関わったスタッフの一人からドラムの難を指摘され、これがやがてメンバーの交代劇へと発展する事に。ピートのプレイに関しては諸説ありますけど、ライヴでは本領を発揮出来ていても、レコーディングとなると話は別…という事だったのでしょうか。この件に関して複数の資料やインタビュー映像を見返してみたものの、知れば知る程心境複雑になるのでこの辺で…。

Disc 1-25〜27
25. Ask Me Why
26. Besame Mucho
27. A Picture Of You


 こちらも表向きには初登場音源。1962年6月11日、イギリスBBC放送の番組"Here We Go"出演時の演奏。22〜24と同じく、AMラジオの放送をマイクで拾ったような音質でこもり気味。興味深いのは25「Ask Me Why」で、ビートルズがラジオ番組で自作曲を披露するのはこの時が初めて。続く26「Besame Mucho」は恐らくThe Coasters経由でのカヴァーで、デッカ・オーディションでも演奏していた曲ですが、このラジオ出演の直前に行われたEMIでの初レコーディング(1962年6月6日)でも演奏しており、そちらは『Anthology 1』(1995年)に収録。残る27「A Picture Of You」は当時ヒット中だったJoe Brownの曲で、ヴォーカルはジョージ。ちなみにJoe Brownは2002年11月に行われたジョージの追悼コンサートにも出演していた人物。

 22〜24の音源を"歴史的音源"と書いた後、このCDに入っている殆どの曲が当てはまるなぁと(笑)。それ程ビートルズにとっての1962年は波乱の一年で。今後新たに発掘音源が出なければ、この3曲がピート・ベスト在籍時最後の音源という事になります。

Disc 1-28 What'd I Say (With Gene Vincent)

 曲はレイ・チャールズのカヴァー。クレジットには1962年夏、Cavern Clubとなっており、Gene Vincentとの共演ってなってますが、サウンドからしてビートルズの演奏ではない…。ビートルズとジーン・ヴィンセントが一緒に写っている写真はDVD版『Anthology』にもちらっと出てきますけど、この音源に関しては詳細不明…。

Disc 2-1〜10

 1962年1月1日に行われたデッカ・レコードでのオーディション音源で、現存する15曲中10曲を収録。もしくは『Anthology 1』に入っている曲がこちらでは未収録。このうち8「Love Of The Loved」(レノン,マッカートニー作。後にCilla Blackに提供)は過去に出た正規盤には未収録で、表向きは初登場な一曲。音は左=低音、右=高音に調整した疑似ステレオで、ピッチ(テープ・スピード)がやや早く、一部音揺れを起こしているのが難点。

「Love Of The Loved」。今回のCDとはピッチが違うのを選んでみました。

Disc 2-11 "Some Other Guy"

 1962年8月22日、リバプールのCavern Clubでのライヴ音源で、古くから存在が知られている英グラナダ・テレビが撮影した映像から音声のみを抜粋したもの…ってこれ、DVD版『Anthology』から起こしたものですね。音質は、元からこういう録音状態だったと思っていただけると。

 そしてこれも、ビートルズにとって大きな転機を迎えた直後の記録と言えるもので、ピート・ベストからリンゴ・スターにメンバー・チェンジしてから4日後のライヴにあたるもの。さらにこの直後にジョンは最初の結婚を果たし、ジョージはピート・ベストの脱退に不満を抱いたファンに殴られた上、バスにぶつけられる等、吉凶入り乱れなカオス状態。しかしデビュー後の状況を思うと、この時点のカオスはまだまだ序の口にも映ったり…。これが「Love Me Do」のレコーディングが完了する前の出来事。


Disc 2-11 "Some Other Guy"

 これも表向きは初登場音源。上記11の収録の際に録音状態が悪かったため、1962年9月5日に同会場で録り直しされた時の音源。現存するアセテート盤から起こされたもので、90年代前半に非正規に出回った事で知られていた音源でした。

Disc 2-12 "Kansas City"

 11と同じく1962年9月5日、リバプールのCavern Clubで収録されたライヴ音源の一部で、約58秒の不完全収録。これは1995年に映像版『Anthology』で初登場したもので、DVD版のサラウンド音源から演奏部分を抽出したもの(演奏に被っていたコメントが微かに聞こえる)。大元はアセテート盤として残されたもののようです。

追記:このCD発売後の2013年7月半ば、この演奏のフル・コーラス版が動画サイトにupされました。といってもこちらのBBSで見かけた情報だったりするので、そちらのURLを書きます。
http://altbeatles.progoo.com/bbs/altbeatles_topic_pr_435.html

Disc 2-13 Radio Interview

 1962年10月27日に収録されたとされるインタビュー音源。

Disc 2-15〜19

 これも表向きは初登場音源(例によって90年代前半から非正規に流出)。1962年10月頃にCavern Clubで録音されたリハーサル音源で、音質はまあまあで途中で音が小さくなったりするものの、興味深いのはその演奏内容。「I Saw Her Standing There」は聞き慣れたものとは異なり、ジョンがハーモニカを吹き、間奏後の歌詞も違っている。というより歌い間違えたのか、途中でポールが笑い出してしまっている。

 2テイク収録の「One After 909」は1963年版と1969年版の中間のテンポで演奏。18,19の「Catswalk」はポール作と言われるインストゥルメンタルの未発表曲。1967年に「Cat Call」と改題されてThe Chris Barber Bandに提供されたとのこと。

●The Chris Barber Band"Cat Call"

Disc 2-20 "Love Me Do"

 現在ではCD『Past Masters』に収録の、リンゴがドラムを演奏しているオリジナル・シングル・ヴァージョン。今回発売されたCDに限らず、パブリック・ドメイン化の影響で複数の見知らぬレーベルからCDや配信版が出ては消え…といった現象が起きていました。

Disc 2-21 "P.S. I Love You"

 これもパブリック・ドメイン化の影響での収録。シングル「Love Me Do」のB面及びアルバム『Please Please Me』に収録されているものと同一。2009年リマスター音源とは音質が微妙に違う程度。

あとこれは気にする程でもないんですけど、『Please Please Me』の2009年リマスター盤収録のものは、最初の2秒間だけやや音質がこもり気味になっているのを今頃になって気づきました。出だしの音量が大きめでつぶれ気味だったかなにかで、それを修正したのかなぁとも思ったりもしますが、気にする程でもないです。

 …という事で、ものがものだけに、1,2度聴いて棚にしまい込んでしまう可能性は高いかなぁ…と。それでもここまで書いてきた感じで、関連書籍を片手に流れを知りながら聴くと楽しみも広がってくると思いますので、是非一度お試しを。
つづく。

(作成:2013年6月4日/更新:2013年7月21,26,31日)
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