The Beach Boys : Carl & the Passions "So Tough" (1972)

120419g.jpg
1. You Need A Mess Of Help To Stand Alone
2. Here She Comes
3. He Come Down
4. Marcella

5. Hold On Dear Brother
6. Make It Good
7. All This Is That
8. Cuddle Up

[メンバー・チェンジ]

 1972年5月発表のアルバム。ジャケットにビーチ・ボーイズの名前はなく(再発盤CDには書き加えられている)、1961年に一時的に名乗っていたといわれる"カール&ザ・パッションズ"なる名前が。ブライアンを含む各メンバーがプロデューサーとして名を連ねているものの、この時期のグループ全体をまとめていたのはカールでした。

 また、ブルース・ジョンストンの脱退やデニス・ウィルソンの手の怪我に伴い、カールは南アフリカ出身のロック・バンド・The Flameからブロンディ・チャップリン(g,b,vo/*1)とリッキー・ファター(d/*2)を正式メンバーに迎え、グループは人種の枠を超えた編成に。当時ビーチ・ボーイズは既にサポート・メンバーを加えてライヴ活動を行っていましたが、バンドのイメージ・チェンジとサウンドの強化の意図もあったと思われます。

 そんな中で出来上がったのがこのアルバム。70年代前半のアメリカン・ロックの影響が強く出たサウンドはビーチ・ボーイズの全作品中最も異彩を放つ内容に。とはいえ60年代デビュー組バンドの同時期アルバムを見渡すと、The Rolling Stones『Exile On Main Street』、The Byrds『Farther Along』、The Hollies『Romany』、The Kinks『Everybody's In Show Business』等も同時代的なサウンドで、こうした傾向は何もビーチ・ボーイズに限った事ではなく。ただ今挙げたバンドとは異なり、グループ最大の個性(ハーモニー)を殆ど出さなかったのはネックになっていると思う。聴き手側も慣れないうちは何かと困惑し、先入観に捕らわれなければ色々と発見も出てきたり(・・・と、全編通して楽しめるようになったのは、聴き始めてから数年経ってからでした)。

 発表当時アメリカでは何故か『Pet Sounds』を加えた2枚組で発売され全米第50位、イギリスでは第25位のヒット。
[収録曲]

1. You Need A Mess Of Help To Stand Alone

 ブライアン・ウィルソンとジャック・ライリーの作品で、リード・ヴォーカルはカール。不穏な響きのタック・ピアノにカントリー風のバンジョーやフィドル、ドゥーワップ・コーラス等が盛り込まれた、一筋縄ではいかないロックン・ロール。"She don't know me...♪"のコーラスで小さく聞こえる声はブライアンでしょうか?(この頃の声色に近い)。


2. Here She Comes

 新メンバー2人の作曲。曲自体はジャジーなリズムと同時代的なアメリカン・ロック調で、コーラスはCSNに近い。バンドの一般的イメージを払拭しようとしてい頃とはいえ、この異色感は意見の分かれどころ。

3. He Come Down

 マイク・ラヴとアル・ジャーディンの共作で、作曲はブライアンと思われる。ゴスペル・タッチの明るい曲で、内容は"何か"を推奨していて…変な例えをすると、学生時代に交流のなかったクラスメイトから、或る日突然電話がかかってきて言いだしそうな類の事が歌われています…(苦笑)。デビューから10年。それだけ経てば青春を謳歌したかつての仲間もどこかしら変わっていても不思議ではなく。

4. Marcella

 ブライアン・ウィルソン、タンディン・アルマー(The Association"Along Comes Mary"の作者で知られる)、ジャック・ライリーの作品。リード・ヴォーカルはカールとマイク。元々60年代に書かれ何度もボツになった曲のメロディ・ラインを基にした、ルーズなロックン・ロール。これはあくまで個人的な意見ですけど、音程を少し上げるともっと良くなった気がしてならないのですが…。ちなみにライヴ盤『In Concert』(1973年)ではパワフルなライヴ・ヴァージョンが聴けます。ここまでがアナログ盤A面。

5. Hold On Dear Brother

 アナログ盤ではB面1曲目。ブロンディ・チャップリンとリッキー・ファター作曲のカントリー・ロックで、ヴォーカルはブロンディ・チャップリン。カールの弾くペダル・スティール・ギターが聴きどころ。

6. Make It Good

 ここでまたムードがガラッと変わる。オーケストラをバックに繊細なメロディを歌うデニス・ウィルソンの作品。当時ダリル・ドラゴン(キャプテン&テニール)と制作していたデニスのソロ・アルバム用の曲だったようです。

7. All This Is That

 アル・ジャーディン、カール・ウィルソン、マイク・ラヴの共作。シンプルで効果的なリズムとエレクトリック・ピアノ、ソウルフルなヴォーカル・ハーモニーとベース・ラインが聞き所。70年代を通してライヴのレパートリーとして取り上げられ、2012年の来日公演でも披露されています。

⚪️2012年8月のライヴより。

8. Cuddle Up

 ラストはデニス・ウィルソンとダリル・ドラゴン作詞作曲による、ピアノを基調にオーケストラが重なる美しいナンバー。

(別ヴァージョン/ミックス)
 アルバム・ヴァージョンはQuadraphonic Mixで、ヴォーカルがオーケストラに埋もれ気味だったのに対し、Single Versionはヴォーカルがオン(音量が上げられている)にミックスされ直してます。但し、CD化の際、更にオンにしてます。(情報提供:K.坂本さん)
(Single Version)
◉「You Need A Mess Of Help To Stand Alone」(アメリカBrother/Reprise REP 1091/Single)
[アルバムのミックスについて]

 裏ジャケットに「Recorded in ambient stereo. compatible with mono. center-channel quad.」とのクレジットがあり、本作は4chステレオ(Quadraphonic Mix)方式でミックスされています。今でいう5.1chサラウンドの元祖で、残念ながら再生機器がないため、どのような音像になっているかは不明。
[CDについて]

[1:1991年盤]
120419h.jpg
『Carl And The Passions: So Tough』((日本盤)Sony SRCS-6091)

◎1991年にアメリカのEpicと日本のSonyが初CD化。

(主な特徴)
🔵アメリカEpic盤CDの表ジャケットの下に"D I G I T A L L Y R E M A S T E R E D"の表記がある。日本盤CDは表記なし。
🔵アメリカEpic盤CDの表ジャケットの左側に"THE BEACH BOYS"と大きな白抜き文字が入れられている。日本盤CDはジャケット上部に"THE BEACH BOYS"と小さく表記されている。
🔵日本盤CDは歌詞・対訳・解説書付き。

[2:2000年アメリカ盤]

『Carl And The Passions: So Tough/Holland』 ((アメリカ盤)Capitol 25694)
◎2000年にアメリカのCapitolから発売されたリマスター盤。

(主な特徴)
🔵『Holland』とのカップリングによるCD2枚組。
🔵2000年リマスター音源
🔵表ジャケットは1991年アメリカ盤CD(左側に"THE BEACH BOYS"と大きな白抜き文字が入れられている)からの複写で画質が不鮮明。ジャケット右と下の一部がトリミングされている。
🔵英文ブックレットには全曲解説、エルトン・ジョンによる序文を掲載。

[3:2000年日本盤]

『Carl And The Passions: So Tough』((日本盤)東芝EMI TOCP-65567)
◎2000年に発売された日本盤。ちなみに2008年には期間限定1,500円で再発売もされています。

(主な特徴)
🔵2000年リマスター音源。
🔵表ジャケットは2000年アメリカ盤CDと同じものを使用。
🔵歌詞・対訳・解説書付き。

[4:2008年紙ジャケット仕様日本盤]

『カール & ザ・パッションズ~ソー・タフ』 ((日本盤)EMI Music Japan TOCP-70533/2008年)

◎2008年7月に発売された日本盤で、紙ジャケット仕様。帯のデザインは70年代の日本盤を基にしています。歌詞・対訳・解説書付。

[5:2016年日本盤]

『カール & ザ・パッションズ~ソー・タフ』((日本盤)ユニバーサル・ミュージック UICY-25602)

◎2016年4月6日に発売予定の再発盤。2000年盤と同内容で、盤はSHM-CDになります。
(主な特徴)
🔵SHM-CD
🔵2000年リマスター音源。
🔵歌詞・対訳・解説書付。
[配信版]

🔵 iTunes Music Store配信版

🔵 Amazon MP3版

🔵 moraハイレゾ版 (2015年10月2日発売)
*1 Blondie Chaplin :
 ビーチ・ボーイズには1973年後半まで在籍。脱退後は主にセッション・ミュージシャンとして活動。ソロ・アルバム『Blondie Chaplin』(1977年)や小原礼(サディスティック・ミカ・バンド)『Picaresque』 (1988年)の参加を経て、1997年〜近年までThe Rolling Stonesのサポート・メンバーとしてバック・コーラス&ギターで活躍。現在はBrian Wilsonのソロ・ライヴに参加。アルバム『No Pier Pressure』(2015年)の「Sail Away」ではアル・ジャーディンと共にヴォーカルを担当。

*2 Ricky Fataar :
 ビーチ・ボーイズには1974年まで在籍(それ以降の作品にもクレジットがある)。脱退後、Bonnie Raittのバック・バンドやビートルズのパロディ・バンド・The Rutlesに参加。近年はジャズ・ギタリストのJohn Scofieldのアルバム『Piety Street』(2009年)に参加。

⚪️The Flame "Another Day Like Heaven"。後期ビートルズやBadfingerに通ずるサウンド。60年代はThe Flamesというバンド名で、英米のRockやR&Bのカヴァーをレパートリーにしていたようです。
My Favorite Albumsのコーナー(目次)へ戻る。

(作成:2004年8月14日/更新:2008年8月26日,2012年4月19日,6月7日,2015年10月16日,2016年2月16日,3月5日)
関連記事
[ 2012/04/19 20:01 ] The Beach Boys関連 | TB(-) | CM(2)

You Need A Mess Of Help To Stand Alone

こんにちは。そうでしたかぁ。残響音・・・。
Quadなのは確かだということですね。
この時期のアルバム(『Surf's Up』〜『Holland』)、もう少し浸透していれば、
こんな感じでリイシューされてもいいような↓
http://amzn.asia/icvHsLw
http://amzn.asia/dX3YFQM

> 無理矢理カップリングされた「ペット・サウンズ」、
> レーベル面にはステレオ表記がありますが、実際はモノです。

おぉミスプリントが。MONO盤を作らなくなった時期なので、つい元の版下にある文字を流用してしまったのかもしれませんね。
あと、この動画↓に茶ジャケットのが写っているんですけど、レーベルの上の方が黒く塗りつぶされていました。
https://youtu.be/nWzuWpAIOhw?t=8m40s

自分だけでは追求しきれない部分でもあるので興味深いです。どうもありがとうございます。
[ 2016/12/08 21:27 ] [ 編集 ]

4ch mix

USオリジナルLPを買ったので、SQデコードして4c hで聞いてみました。
リアに直接楽器音は殆ど無く、主に残響音で音場を広げる効果になっているようです。
普通に2c hステレオで聞いてもそんなに変わりは無いようです。

無理矢理カップリングされた「ペット・サウンズ」、
レーベル面にはステレオ表記がありますが、実際はモノです。
[ 2016/12/06 23:01 ] [ 編集 ]

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する