The Beach Boys : Love You (1977)


ラヴ・ユーラヴ・ユー
(2000/09/27)
ザ・ビーチ・ボーイズ

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1. Let Us Go On This Way
2. Roller Skating Child
3. Mona
4. Johnny Carson
5. Good Time
6. Honkin' Down The Highway
7. Ding Dang

8. Solar System
9. The Night Was So Young
10. I'll Bet He's Nice
11. Let's Put Our Hearts Together
12. I Wanna Pick You Up
13. Airplane
14. Love Is A Woman

[ブライアン・プロデュースによる70年代版シンセ・ポップ・アルバム]

 1977年4月発表のアルバム。前作『15 Big Ones』ではオリジナル7曲、カヴァー8曲という構成だったのに対し、本作では全曲がブライアンの作曲とプロデュース(歌詞は曲毎に異なり、ミックスはカールによるもの)となり、各メンバーのヴォーカルや楽器の振り分け等、久々にブライアン独特のカラーが出たものに。先にあえて難を言うと、全体的に小粒な印象を受けるものが多く、これでもう少しキャッチーなイントロやノリのいい曲があれば「ファンや評論家からは傑作との声が多い」以外の評価も得られたのでは…と、あくまで個人的な感想。

 サウンドはピアノ、オルガン、シンセサイザーといったキーボード類が多用され、特にシンセ・ベースが際立って印象的(あ、それでジャケットが昔のテレビ・ゲームのようなドット画なのか)。シンセサイザー自体は『Sunflower』(1970年)から導入され、他にも「Long Promised Road」「The Trader」「Funky Pretty」や、1972年にブライアンが手がけていたAmerican Springのアルバムでも効果的に使われていたので、それがここに来て一気に前に出たって事でしょうか。ただ、ビーチ・ボーイズの音楽を振り返ってみると「Good Vibraions」「Cabin Essence」で隠し味的にファズ・ベースが入っていたり、『Smiley Smile』『Wild Honey』でも後ろの方からオルガンが「ビー」とか「ジー」とか鳴っていたので、それがシンセ・ベースに置き換わったという見方も出来そう。ビーチ・ボーイズは音にしても歌詞にしても、潜在意識にあったものが後になって前に出て来る事があるので、本質的な部分は変わっていないと思う。

 ちなみに70年代でシンセ使用頻度が高いアルバムを挙げると、Todd Rundgrenの『A Wizard, A True Star』『Initiation』、他にクラフトワーク等が思い当たりますけど、もう一作、『Love You』とは似て非なる好対照作品としてDavid Bowie『Low』(1977年1月)を挙げたいと思います。両者はアプローチも違うし(そういえばDavid Bowieは「God Only Knows」をカヴァーしてましたね)、向うはベルリン製、こちらはカリフォルニア製…とこれだけでも違いますけど、同時期に制作されたアルバムとして記憶に留めておいてもいいのではないでしょうか。
[収録曲]

1. Let Us Go On This Way

 A面(Track 1~7)はやや散漫なもののアップ・テンポの作品が並び、威勢よく始まる1曲目の「これしかないぜ俺達は」(←以前の邦題)はブライアンとマイクの共作。スティーヴ・ダグラスによるサックス以外の演奏はブライアンの一人多重録音。リード・ヴォーカルはカールとマイク。

2. Roller Skating Child

 ローラー・スケートをテーマにしたブライアンの作品で、アルバムの中では特に力強さを感じる曲とあってか、日本では独自にシングル・カットされた事も。リード・ヴォーカルはマイクとアル(ラストのみプライアン)。

3. Mona

 こちらもブライアンの単独作品(なのでBo Diddleyやルースターズとは同名異曲)。60年代前半のフィル・スペクターを電化したようなサウンド(←自分で書いておいて意味不明だと感じる…苦笑。歌詞の中に「Da Doo Ron Ron」やフィル・スペクターの名前が登場する)をバックにデニスが歌う。最初から最後までサビだけで出来ているような不思議な曲。

4. Johnny Carson

 ブライアンの作品。実在する人名がタイトル。内容もこの人物について歌われていて、恐らく、アメリカで当時人気司会者だったジョニー・カーソンをテレビで観ていてふと、思いつきで書いた可能性が。blogやTwitterのような感覚。ネットの存在しない70年代に、現代のSNSでよく見かける事を歌にしているという…(笑)

 1975年後半からしばらくの間、当時のセラピストの提案でブライアンにピアノで思うままに弾いてもらい、以前の勘を取り戻す作業を行っていた事があり、この曲もその中から誕生した一つだったようです。以前のようにデニスや他の作詞パートナー(他者)から何かしら具体的なテーマを提示されない場合、ブライアン自身から出て来るものを表現すると、このアルバムで歌われるような内容になる…って事でしょうか。

5. Good Time

 ブライアンとアルの共作で、リード・ヴォーカルもブライアンとアルが交互に歌う。アルバムの中でこの曲だけ他とはサウンドが異なる…というのも、元々は1969~1970年頃にかけてアルバム『Sunflower』用に録音された曲でしたが、その時はお蔵入り。その後1972年に(American)Springのアルバム『Spring』の曲として発表されています(ベーシック・トラックは同一。ただしアレンジは微妙に異なる)。そういった事情もあり、この曲のみ以前のブライアンの声が聞ける。

6. Honkin' Down The Highway

 ブライアンの作品で、70年代版ホッド・ロッド・ナンバーといったところ。リード・ヴォーカルはアル。バック・コーラスはブライアンの多重録音なのでしょうか…もし気のせいでしたらすみません(笑)。当初はツアー・メンバーのBilly Hinscheによって歌われていたようです(その音源が誰かが勝手に出したCDで出回っていたりする)。

 ちなみにアル・ジャーディンが後にソロ・アルバム『A Postcard From California』(2010年)でこの曲をリメイク。バック・コーラスにはブライアンも参加しています。

(別ヴァージョン)
 1991年に初めてCD化された際、イントロのドラムがカットされたものが収録されていました。別ヴァージョンというより編集ミスの可能性が。
(収録CD)
◎『ラヴ・ユー』((日)Sony SRCS 6095/1991年)

7. Ding Dang

 ブライアン・ウィルソンとロジャー・マッギン(The Byrds)の共作で、カールとアルがヴォーカル…と、文字情報だけだと作者クレジットに少なからず興味を抱きますけど、聴いての通り、いいノリで始まったかと思ったら、そのまま54秒でフェイド・アウト…(笑。実は元々1分ちょいだったのを部分的にEditされている)。かつてのような曲の断片なのか、アクセントのようなものなのか…って考えても仕方がないですけど、A面のラストを告げる一曲。

8. Solar System

 アナログ盤ではここからがB面(Track 8~14)。ここからはあれこれ言わずにじっくり聴く方がいいでしょう(笑)。この曲はアルバムのシンセ・ポップな面が最も出ており、ブライアンが太陽系について歌っている。曲の雰囲気はどこか「Let The Wind Blow」(1967年)に通ずるものが。

9. The Night Was So Young

 ブライアンの作品で、旧邦題は「夜はこれから」。タイトルや歌い出しに反し、歌が進につれて感傷的なものに。リード・ヴォーカルはカール。教会風のオルガン、サビのコーラスとややかすれ気味のブライアンのファルセットが聴き所。個人的には2012年発表の「From There To Back Again」でのギターを聴くとこの曲の事を思い出す。

10. I'll Bet He's Nice

 ブライアンの作品で、こちらもシンセサイザーで構築された一曲。デニスとブライアンがざらついた声で交互に歌うのが続いたあと、サビでカールのヴォーカルにスーッと切り替わる。ちなみに1991年盤CDと2001年盤CDとで歌詞の訳の解釈が違うので、聞き手の受け止め方もやや違ってくる…かも。

11. Let's Put Our Hearts Together

 ブライアンの作品。その後の事を思うと切なくなってしまうものの、ブライアンと妻(当時)のマリリンとのデュエットによるもの。ちなみにこの曲も1991年盤CDと2001年盤CDとで歌詞の訳の解釈が異なっている。1991年盤では男女のデュオだと読み取れるのに対し、2001年盤ではブライアン一人が歌っているかのような書き方になっている…。それは置いといて、このアルバムの聴き所の一つ。

12. I Wanna Pick You Up

 ブライアンの作品で、前作でのセッションでレコーディングされた曲。リード・ヴォーカルはデニスとブライアン。恐らく当時2人の娘(カーニーとウェンディ)の親となっていたブライアンが、娘達と接している中で思い浮かんだ曲なのでは。

13. Airplane

 飛行機に搭乗中での情景等を描いたブライアンの作品。リード・ヴォーカルはマイクで、途中からブライアンとカールに替わる。

14. Love Is A Woman

 ラストはブライアンの作品で、50年代R&Bバラッドのような曲調をバックにブライアンがドスの利いた声で歌う(途中でマイクやアルに替わる)。

 そして…ブライアンは心身共に復調へ向うと思われましたが、セラピストの度を超した干渉と膨大な治療費がグループに問題視され、アルバム発表直前にセラピストは解雇。それと共にブライアンの生活は再び乱れ始め、他のメンバーの間にも方向性の違いが出始める事に。さらにしばらく新曲を発表する場がなかったデニスは、ソロ・アルバムの制作に乗り出します。

 そんな中で発表されたアルバム『Love You』は最高位が全米第53位/全英第28位だったのを反映するかのように、周囲の関心はパンクやディスコへと移り、ビーチ・ボーイズの第2時ブームは一段落。再び低迷期へ…。



[CDについて]

[1 : 1991年日本盤]
『ラヴ・ユー』((日本盤)Sony SRCS 6095)

ラヴ・ユーラヴ・ユー
(1991/06/01)
ビーチ・ボーイズ

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◎1991年にSonyから発売されたCD。

(主な特徴)
🔵6「Honkin' Down The Highway」のイントロのドラムが編集でカットされている。
🔵歌詞・対訳・解説書付。

[2 : 2000年輸入盤]

15 Big Ones / Love You15 Big Ones / Love You
(2000/07/29)
Beach Boys

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『15 Big Ones / Love You』((アメリカ盤)Capitol 27945)

◎2000年8月にアメリカのCapitolから発売されたCD。

(主な特徴)
🔵『15 Big Ones』との2 in 1形式で収録。
🔵2000年リマスター音源
🔵解説書付。

[3 : 2000年日本盤]

ラヴ・ユーラヴ・ユー
(2000/09/27)
ザ・ビーチ・ボーイズ

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『ラヴ・ユー』 ((日本盤)東芝EMI TOCP-65571)
◎2000年に発売された日本盤CD。ちなみに2008年には同内容の1,500円期間限定発売盤も出ています。

(主な特徴)
🔵2000年リマスター音源
🔵歌詞・対訳・解説書付

[4 : 2008年紙ジャケット仕様日本盤]

ラヴ・ユー(紙ジャケット仕様)ラヴ・ユー(紙ジャケット仕様)
(2008/07/23)
ビーチ・ボーイズ

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『ラヴ・ユー』 ((日本盤)EMI Music Japan TOCP-70551)

◎2008年7月に発売された日本盤。

(主な特徴)
🔵2000年リマスター音源
🔵LPジャケットのデザインをミニチュア復刻した紙ジャケット仕様
🔵歌詞・対訳・解説書付

[5 : 2016年SHM-CD日本盤]

『ラヴ・ユー』 ((日本盤)ユニバーサル・ミュージック UICY-25606)
◎2016年4月6日に発売予定の再発盤。2001年盤と同内容で、盤はSHM-CDになります。

(主な特徴)
🔵SHM-CD
🔵2000年リマスター音源
🔵歌詞・対訳・解説書付
[配信版]

🔵 iTunes Music Store配信版

🔵 Amazon MP3版

🔵 moraハイレゾ版 (2015年10月2日発売)
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(作成:2004年8月14日/更新:2008年8月26日,2012年4月19日,9月23日,2015年10月16日,2016年2月15日,3月5日)
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No title

φ(.. )
[ 2016/02/16 22:36 ] [ 編集 ]

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