The Kinks : Lola Versus Powerman and the Money-Go-Round, Pt.1


1. The Contenders
2. Strangers
3. Denmark Street
4. Get Back in Line
5. Lola (Album Version)
6. Top Of The Pops
7. The Moneygoround
8. This Time Tomorrow
10. Long Way From Home
11. Rats (Album Version)
12. Apeman (Album Version)
13. Powerman
14. Got To Be Free

The Kinks :
Ray Davis (vo,g)
Dave Davis (g,vo)
Mick Avory (d)
John Dalton (b)
John Gosling (k)

🔵 アメリカでのライヴ活動再開、レイの俳優デビュー(1970年3月)、ジョン・ゴスリング(k)の加入(同年5月)、シングル「Lola」の大ヒット等を経て1970年11月に発表したアルバム(全米第35位)。前作同様長いアルバム・タイトルが付けられ、サウンド面では随所に同時代的のアメリカン・ロックやSSW系の影響を感じさせるほか、最新機材の整ったスタジオでの作業により、過去作品との質感の変化も表れています(これは1969〜1970年全般のレコードに当てはまる)。

 1「The Contenders」はブルーグラスからノリのいいブルース・ロックに変わり、主人公が「今すぐ自由にならなくては」と告げる場面でアルバムは始まる(歌の前半では一人称なのが、後途中で「僕達」に変わり、最後に「僕は勝者になりたい」と宣言している)。この曲がキンクス自身の事だとすれば、3「Denmark Street」はその後、音楽出版社または事務所との契約の場面になる。相手は「君の音楽は嫌いだが、売れるかもしれないからとりあえず契約しよう」なんて言う。実業家のブライアン・エプスタインがロック・バンドと関わり成功を手にした事で、周りも後に続けと躍起になっていた時代の話。ちなみにThe Byrdsの「So You Want To Be A Rock 'N' Roll Star」とは視点が異なる曲。感傷的な4「Get Back in Line」は人生の岐路に立つ主人公のとある一コマ。

 「Days」以降しばらくチャートの上位からご無沙汰気味のキンクスが再び脚光を浴びるきっかけとなったのが、70年代キンクスの代表曲「Lola」。個人的な話で申し訳ありませんが、初めて聴いた時(+同じタイミングでDuran DuranのAndy Taylorのカヴァー・ヴァージョンがテレビでよく流れていた)は単純にいい曲だという認識で、しばらく経ってから歌詞の内容を知った時は驚きましたが…しかもライヴでは必ず大合唱になるわけで(笑)。試しに歌詞に出てくる地名を都内のどこかに置き換えてみるとか、この曲を知った上で「傷だらけ」が題名につく曲を聴いたらどうなるのか…っていう妄想は置いといて、歌詞に商品名があると国営放送でオンエア出来なくなる問題が生じたため、Single Versionでは"Cherry Cola"に差し替え歌い直されています(判別しやすいヴァージョン違い)。

 6「Top Of The Pops」では聞き覚えのあるヒット曲のパロディをバックに、レコードがチャート・インした事で状況が変化する様子が描かれ、7「The Moneygoround」で主人公は妙な状況に気づく。人気も出て曲もヒットしているのに、稼いだお金が周りに摂取されて自分の手元に来るのはごく僅か…と嘆く。ミュージック・ビジネスでのよくある出来事。

 この曲、レコードの中での物語=フィクションとして描けばよかったものを、歌詞に(元を含む)マネージャーの実名を出した事で自体はややこしい事に。90年代前半に放送されたテレビ番組『The Story Of The Kinks』の中で当時のマネージャーが「原則的には彼の曲で儲けてはいない。あまりいい気分はしないね。面白い部分も当たっている部分もあるが、無視する事にしたよ。」とコメントしていますが、翌年マネージャーはバンドと襟を分かつ事に…。

 5「Apeman」は「Lola」に通ずる曲調にトロピカルな雰囲気が加味されたサウンドで、イギリスでは5位のヒット。そのB面だった11「Rats」はデイヴ作のハード・ロック(ちなみにSingle Versionはモノラルでヴォーカルにエコーのかかった別ヴァージョン)。9「Long Way From Home」は主人公の親の立場からの視線。13はノリのいいサウンドに乗せて権力者について歌われ、ラストの14「Got To Be Free」では1曲目のメロディが再び登場してアルバムは終わる。

 他に触れていない曲では、飛行機のSEで始まる8「This Time Tomorrow」は移動中の機内でぼんやりと考え事でもしているのでしょうか。この曲もThe Byrdsの「Eight Miles High」とは視点がやや異なる(こちらは7マイル)。ちなみにこの曲は後に映画『The Darjeeling Limited (ダージリン急行)』(2007年)の挿入歌として使用され、iTunesの配信版でシングルもリリース。同映画ではデイヴの2「Strangers」も使用されており、この曲もアルバムの聴きどころの一つ。近年ではノラ・ジョーンズがカヴァーし、アルバム『The Fall (Deluxe Edition)』(2010年)のボーナス・ディスクに収録された事で、キンクスを知らない層にも知られるようになります。
[YouTubeより]

⚫️「This Time Tomorrow」「Strangers」が挿入歌として流れる映画『ダージリン急行』(2007年)の告知映像。

⚫️1977年12月のライヴより「Get Back in Line」
[CDについて]
 80年代以降にイギリスCastle盤、アメリカRhino盤、日本のテイチク盤など多数出回っていますが、ここでは90年代以降に発売されたものからいくつかピック・アップします。なお画像はAmazonからのリンクを使用しています。

[1 : 1993年日本盤]

『ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組第1回戦』((日本盤)ビクター エンタテインメント VICP-2096)
◎1993年12月16日発売の日本盤CD。ちなみに「Top Of The Pops」のオープニングに入っているはずのドラム・ロールがカットされています。歌詞・対訳、歌詞の内容にも触れている解説書付き。

[2 : 1998年イギリス盤]

『Lola Versus Powerman and the Money-Go-Round, Pt.1』(イギリスEssential(Castle)/ESMCD509)

Track 1〜14・・・Original Album
(Bonus Tracks)
15. Apeman (Demo)
16. Powerman (Demo)

◎1998年12月16日発売。現在一般的に流通しているリマスター盤で、ステレオ・ミックスのアルバムにシングルや別ヴァージョンなどをボーナス・トラックとして収録。

(Bonus Tracks)
15. Apeman (Demo)

 "Demo"とクレジットされていますが、何も問題がなければこれが通っていたはずの"初期別テイク"で、通常のAlbum Versionよりキーボードやギターが目立つ。2分14秒付近の歌詞"fogging"が"f**kin'"に聞こえる(空耳)事を懸念したレコード会社からの要請で再録音する羽目に。しかし一部の国では既にテープが送られた後か伝達が遅れたかで、ボツにしたこのテイクがリリースされてしまったようです。ちなみにこのCDに収録されているのは前後のSEのみステレオで、演奏部分はモノラル。

16. Powerman (Demo)

 "Demo"とクレジットされていますが、モノラルの別ヴァージョンで、Album Versionより約10秒長い。イントロがフェイド・インで始まり、ヴォーカルにエコーがかかっていない。デイヴのハーモニー・ヴォーカルも遅れて登場する。

[3 : 1998年日本盤]
(ジャケットありませんスミマセン)
『ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組第1回戦』((日本盤)ビクター エンタテインメント VICP-60229)

◎上記イギリスCastle盤を基にした日本盤。ブックレットには英文ライナーの翻訳、加藤ひさし(The Collectors)のコメント、ライターの小松崎健郎氏によるザ・キンクス・パイ・ヒストリーと作品紹介を掲載。歌詞・対訳付き。

[4 : 2000年紙ジャケット仕様日本盤]

『ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組第1回戦』((日本盤)ビクター エンタテインメント VICP-61001)

◎日本のビクターが作成した限定盤紙ジャケットCD。ボーナス・トラックはなし。

[5 : 2001年紙ジャケット仕様]

『Lola Versus Powerman and the Money-Go-Round, Pt.1』(イギリスSanctuary/CMTCD320)

◎イギリスのSanctuaryが製作した紙ジャケットCD。紙ジャケットは特製のビニール・ケースに入れられています。

[6 : 2007年紙ジャケット仕様]

『ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組第1回戦』((日本盤)BMG Japan BVCM-37978)

◎日本のBMG Japanが"kinks Paper Sleeve Collection"というシリーズで発売したCDで、紙ジャケット仕様。音源は1998年リマスター音源を採用。歌詞・対訳・解説書付き。

[7 : 2009年日本盤]

『ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組第1回戦』((日本盤)Sanctuary/Universal UICY-60108)

◎2009年3月に発売されたCD。権利関係の移行により日本のユニヴァーサル・インターナショナルからのリリース。内容は1998年リマスター盤と同一。歌詞・対訳・解説書付き。

[8 : 2014年Deluxe Edition]

『ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組第1回戦 (Legacy Edition)』((日本盤)Sony Music Japan SICP-30679〜80)

[Disc 1]
Track 1〜13・・・"Lola Versus Powerman and the Money-Go-Round, Pt.1"
(Bonus Tracks)
14. Anytime (Previously Unissued)
15. The Contenders (Instrumental Demo)
16. The Good Life (Previously Unissued)
17. Lola (Alternate Version)
18. This Time Tomorrow (Instrumental)
19. Apeman (Alternative Stereo Version)
20. Got to Be Free (Alternate Version)

[Disc 2]
Track 1〜13・・・"Percy"
(Bonus Tracks)
14. Dreams (Remix)
15. Lola (Mono Single Version)
16. Apeman (Mono Single Version)
17. Rats (Mono Single Version)
18. Powerman (Mono Single Version)
19. The Moneyground (Mono Alternative Version)
20. Apeman (Alternate Mono Version)
21. God's Children (Mono Film Mix)
22. The Way Love Used to Be (Mono Film Mix)
23. God's Children (End) (Mono Film Mix)

◎2014年9月にSony Musicから発売された2枚組"レガシー・エディション"。Disc 1に『ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組第1回戦』、Disc 2に『Percy』を収録。

🔵2014年リマスター音源。
🔵未発表音源を含むボーナス・トラック入り。
🔴日本盤はやや太めのプラ・ケースを使用。
🔴盤は"Blu-spec CD2"を採用。
🔴日本盤ブックレットには英文ライナー翻訳、日本語解説書(2004年作成記事の改訂版+ボーナス・トラック解説)、歌詞・対訳、ディスコグラフィを掲載。

 ボーナス・トラックのうち『ローラ対パワーマン、マネーゴーラウンド組第1回戦』関連のみに触れると・・・

[Disc 1]
(Bonus Tracks)
14. Anytime

 初登場の未発表曲で、同時期のスワンプ・ロック的な曲調。

15. The Contenders (Instrumental Demo)

 初登場音源。Album Versionとは異なるインストゥルメンタルの別テイク。前奏のパートがなく、リズム・パターンも一部異なる。

16. The Good Life

 初登場音源で、これまで未発表だったルーズなロックン・ロール。

17. Lola (Alternate Version)

 初登場の初期別テイクで、イントロのリフやエンディングのドラの音が無く、歌詞も一部異なる。しかし決め手に欠けるという事でボツに。

18. This Time Tomorrow (Instrumental)

 初登場音源。Album Versionとは異なるインストゥルメンタルの別テイク。

19. Apeman (Alternative Stereo Version)

 1998年リマスター盤ボーナス・トラックと同じ初期別テイクですが、こちらは演奏部分のギターが左右で聞こえるステレオ版。1971年発売の日本盤LPが初出らしい。

20. Got to Be Free (Alternate Version)

 Album Versionより前に録音された初期別テイクで、レイが俳優として出演したドラマ『Long Distance Piano Player』の中で使用された音声を起こしての収録(モノラル)。Album Versionがノリのいいバンド演奏中心だったのに対し、こちらはチェレスタやピアノを主体にしたアレンジ。

[Disc 2]
(Bonus Tracks)
15. Lola (Mono Single Version)

 言わずと知れた、歌詞の""Coca-Cola"を"Cherry Cola"に差し替えた、モノラルのシングル・ヴァージョン。後半のドラが出てくるタイミングもステレオより遅いような。もしベスト盤でモノラルで収録されていたらこのSingle Versionという事で。

16. Apeman (Mono Single Version)

 モノラルのシングル・ヴァージョン。語りの部分に挿入されたSEの音量が大きい。

17. Rats (Mono Single Version)

 ヴォーカルにエコーがかけられた、モノラルのシングル・ヴァージョン。

18. Powerman (Mono Version)

 1998年リマスター盤初出の、フェイド・インで始まり、ヴォーカルにエコーのかかっていないMono Version。

19. The Moneyground (Mono Alternative Version)

 厳密には"初CD化"で、1989年発売のVHSビデオ『Music Biography The Kinks 1964-1984(キンクス・ストーリー)』(←正式なタイトルはよく判らない)にも収録されていた、1972年撮影のスタジオ・ライヴ映像から音声のみを収録。映像は後にボックス『The Kinks at the BBC』(2012年)でDVD化。

20. Apeman (Alternate Mono Version)

 Disc 1-19収録の別テイクのモノラル・ミックス。

・・・ということで、次回『Percy』(1971年)へつづく。
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(2004年2月4日作成記事を再構成/更新:2014年7月5日,2016年1月22日/Special Thanks : Nさん,Mさん)
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